四位洋文×福永祐一 ぶっちゃけフリートーク

デビュー当時、目標とする騎手は四位さんだったんですよ

福永
四位さん、この前雑誌のインタビューで、僕に初めて会ったのは東京競馬場って答えてましたけど…。
四位
俺がゴールデンジャックで乗りに行ってるとき、来てたやん? 祐一がまだデビューする前やで。
福永
確かに行ってました。今でいうフローラS(当時は4歳牝馬特別)のときですよね。でも、初めて会ったのは北橋厩舎ですよ。僕が実習で厩舎に行ったとき、大仲の扉をガラッと開けたら、四位さんがソファーに座っていて。
「北橋厩舎に所属することになった福永祐一です。よろしくお願いします」
って挨拶したら、
「おぅ!」って。
四位
全然覚えてない(笑)。
福永
当時は後輩をまったく寄せ付けない雰囲気がありましたよ。デビューするときって、必ず目標とする騎手を聞かれるじゃないですか。僕の場合、大抵の人は「福永洋一」って答えると思っていたと思うんですけど、僕は「四位さん」って答えていたんですよ。
四位
俺が4、5年目のころやな。
福永
今考えたら、5年目くらいの騎手を目標として挙げるって、なかなかないですよね。
四位
そうやな。祐一がそういってくれてるっていうのは、いろいろ見たり、周りから聞いたりして知ってたけど、単純にうれしかったよ。
「まぁ、そうやろな」みたいな感じで(笑)。
福永
アイツ、わかってんじゃねーか、みたいな(笑)。
ノリさん(横山典弘騎手)にも、「お前、なかなかいいところ見てんじゃねーか」っていわれた記憶がありますよ。

祐一は後輩っていうより信頼できる人のひとり

四位
当時、北橋厩舎の馬によく乗せていただいていたから、自然と話をするようになったよな。祐一も「手伝わせてください」って、積極的に身の回りのこととか手伝ってくれて。
福永
見習いのころは1R前に競馬場に着いて、まず四位さんのロッカーに行ってヘルメットとかを準備して、四位さんがロッカーを開けたときには準備が終わってる…みたいな状態にしてましたね。
四位
当時はバレットさんもいなかったし、見習いのころは競馬場に行っていかに先輩ジョッキーに顔と名前を覚えてもらうかが大事やもんな。今はバレットさんがいるから、若い子が先輩の身の回りのお手伝いをする機会がない。かわいそうといえばかわいそうだよね。先輩ジョッキーを身近に感じることができないから。
福永
まず兄弟子がいませんしね。
四位
俺が見習いのころなんて、ものすっごく緊張してたよ。ジョッキールームに入るのさえ嫌やったもん。
怖い人がいっぱいいて(笑)。
福永
〝怖い人〟の数でいったら、四位さんのデビュー当時がピークですよね(笑)。
四位さんにとって兄弟子的な存在となると…。
四位
やっぱり(田原)成貴さんやろね。
俺の騎手としてのベースになっている部分は、成貴さんの影響を受けてると思う。
迷ったり、悩んだりしたときに、成貴さんに教えてもらったことが判断材料になったり。
福永
僕にとっては四位さんが、実は一番影響を受けている先輩なんですよ。
考え方とか、お酒の飲み方とか。ただ、影響は受けてますけど、真似はできません。そもそも性格がまったく違いますからね。自分でいうのもなんですけど、僕のほうが器用に立ち回れるし、四位さんは繊細やから。
四位さんは傷つきやすい(笑)。
四位
祐一は見た目によらず、神経が図太いから(笑)。
福永
そうかも(笑)。僕、仮に人に裏切られても、それほど堪えへんと思いますよ。
四位
俺にとって祐一は後輩っていう感じがあんまりしないけどね。後輩は後輩なんやけど…なんていうのかな、信頼できる人のひとりっていうか。祐一はいつでも自然体だよな。
福永
人間同士の付き合いのなかで、よく生理的に受け付けない人っていると思うんですけど、僕は生理的に好きな人としか付き合いませんから。具体的にどうこうは説明できませんけど、パッと第一印象で。

四位
俺は祐一の〝人間性〟が欲しいわ。祐一の柔軟性とか社交性とかがあったら、俺、ジョッキーとして無敵ちゃう(笑)?
福永
それをいうなら、僕に四位さんの馬乗りのセンスがあったら無敵ですよ(笑)。

確かに必要な嘘もある。でも馬については嘘をつきたくない。

四位
人間って、やっぱり自分にないものを求めるからね。とはいえ、わかってはいてもできないのが人間で。俺なんか、競馬の世界に入ったときに、ちゃんと元気よく挨拶をして、みんなに可愛がってもらえるようにならないとダメだよっていわれたけど、できなかったもんね。
福永
四位さんは媚を売ってるように見られるのが嫌なんですよね。僕はそう思われても平気なんですけど。
四位
若いころは、たとえば馬主さんとかに挨拶に行って「お前、誰やねん」って思われるのが嫌で、できなかった。祐一はお父さんの存在もあって注目度が高かったから、みんな祐一のことを知ってたもんな。最初からみんなが、祐一、祐一ってすんなり呼べる存在だった。

福永
確かに〝福永〟って呼ばれたことはないですね。四位さんがデビューしたころはどうだったんですか?
四位
所属してた厩舎の厩務員さんとか、すごく厳しかったよ。まぁ今、実際に俺みたいな新人がいたら「お前、そんなんじゃ通用しないぞ」って言うけどね(笑)。俺自身、何度も打ちのめされて、この世界はひとりじゃ何もできないんだって気付いた。
でも何が恵まれてたかっていうと、くすぶってるときに自分の師匠以外にも厳しく言ってくれる人がいたことだよ。
祐一の師匠の北橋先生をはじめ、瀬戸口先生とか領家先生とか。同郷っていうのもあって、気にかけてくださってね。「うちの攻め馬、手伝えよ。競馬も乗せてやるから」って。
福永
そういう先生方の存在は、確かに大きいですよね。
四位
もともと俺は、なんでも〝上手〟じゃないから。うまいこといったりできなくて、正直にしゃべっちゃう。確かに必要な嘘ってあるんだろうけど、馬についてはできる限り嘘をつきたくない。その点、祐一は、なんでも嘘をつかずに、且つ上手にいえるからすごいと思うよ。
福永
北橋先生や瀬戸口先生とは、絶対の信頼関係がありましたからね。馬の能力とか使い方とか、率直な意見を言わせていただける環境にはありました。
四位
最近でも祐一が話しているのを聞いてると、俺、関心するもん。ああ、こういう言い方をすればいいんだなって(笑)。俺はぶっきらぼうだし、あまり馬を褒めないからね。馬ってホントにわからないから、常に半信半疑で見るようにしてるし。
福永
簡単に、これは大物だよ! とかいう人もいますよね(笑)。
四位
大物だっていって、大物にならなかったときの恥ずかしさといったら(笑)。
福永
僕もそのあたりは慎重になります。
四位
俺は幸いにもウオッカのような馬の背中を知ってるから、そう簡単に大物だなんていえないよ。キャリアを積めば積むほど、簡単にはいえなくなる。
福永
そうですね。だからファンの人も、大物だとかいうコメントそのものよりも、誰がそのコメントをいってるかに注目したほうがいいですよね(笑)。

競馬とは全然関係のない友達に「お前、なにやってんだよ!」って言われて…

四位
そういえば祐一、ようやく先週(10月3日終了時点)、トップに立ったな。
福永
はい。
この前、競馬とは全然関係のない友達に「お前、なにやってんだよ」っていわれました。
「武豊さんが怪我でいないときに、なんでお前が1番じゃないんだよ。こういうときに、お前が1番に立たないでどうするんだよ」って。そうやなって思いましたね。
四位
ただ、いいときはずっといい波がくるものだからね。あんまり焦らないほうがいいよ。
俺は正直、(関西リーディングを獲った01年は)しんどかったけどね。
福永
やっぱりストレスとかありました?
四位
俺はあったね。その年の夏、俺、鎖骨を折って1カ月休んでしまってさぁ。だからコンディション的に若干不安があったんだけど、やっぱり周りは応援してくれるからね。ただ、そういうときって不思議とポンポンと勝てるんだよ。
福永
やっぱり周りも「よし、今年は四位にリーディングを獲らせるぞ」っていう雰囲気になりますもんね。
四位
(松永)幹夫さんと藤田くんと3人で競ってたんだけど、俺にたくさん乗せてくれる厩舎は、俺に合わせて馬を用意してくれて。もちろんうれしかったけど、それだけプレッシャーもあったし、申し訳ないなぁと思ったりもしたし。でも、リーディングを獲ろうと思ったら、そういう感情を捨てなきゃダメだと思った。まぁ今になって思えば…なんだけど。そのときは考えてるヒマもなかったから。祐一も今、番組詰まってるでしょ?
福永
ここ3日連続で、障害以外は全部乗ってますからね。僕はここから、ぶっちぎっていこうと思ってるんで、エージェントにもバンバン馬を入れてくださいってお願いしてるんです。四位さんは数を求めませんよね。
四位
モチベーションの違いだよね。俺が今、一番思っているのは、信頼できる人と仕事をしたいってこと。とくに先生ね。意見をいえて、向こうもちゃんと聞いてくれて、わかってくれて。そうやって本当のコミュニケーションを取れる厩舎といい仕事をしていきたいって思ってる。こう思うまでには、怪我をしたり、馬が死んでしまったり、いろんな思いを経験してきたから…。
だから祐一も、怪我に気をつけて焦らずにな。
福永
はい。ありがとうございます。
でも僕、今年は絶対に負けませんよ!
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