前編からの続き
(取材日=2011年1月21日、聞き手=不破由妃子)

──
02年の桜花賞を皮切りに、これまでGIレースで11勝。
パートナーは記憶に残る名馬ばかりですが、
やはり池添さんご自身に影響を与えた馬となると…
池添
文句なしにデュランダルです。 今でも携帯電話の待受は、
デュランダルなんですよ。
あの馬こそが、ジョッキーとしての僕のベースなので。
──
初めて騎乗されたのは、
デュランダルが4歳のときのセントウルS(03年)でしたね。
池添
そうです。坂口(正大)先生から依頼をいただきました。
調教に乗った時点で『この馬、すごいな』っていう感触があって、
競馬では追い込んで3着。かなり手応えを感じたんです。
だから、レースが終わって馬を下りたあとすぐに、
『次も乗せてください』
って先生にお願いしに行きました。
──
ご自分から次の騎乗をお願いしに行ったり、積極的にされるんですね。
池添
します、します。
デュランダルに限らず、お願いしにも行きますし、
あとは常に先生やスタッフの方とコンタクトを取るようにしてます。
──
デュランダルの〝次〟は、スプリンターズSでしたね。
池添
先生はスプリンターズSに行くか、
ポートアイランドS(阪神芝1600m)に行くか迷ってらっしゃったみたいで、
僕から『スプリンターズSに行きましょう!』って提案させていただいたんです。
でも僕、それまで中山の芝1200mは乗ったことがなくて(笑)。
スプリンターズSが初めての騎乗だったんですよ。
返し馬のとき、
〝ゲートはどこやろ?〟って
探したくらいですから(笑)。
──
初めて乗る直線の短いコースで、騎乗するのは追い込み馬。
ご自分から参戦を提案されたこともあって、
プレッシャーもあったでしょうね。
池添
いや、5番人気だったので、思い切って乗れましたよ。
1番人気のビリーヴが2着でハナ差だったんですけど、
今思うと…
大きな大きなハナ差でしたね。
──
デュランダルからはどんなことを教えてもらいまいたか?
池添
追い込み馬だから、こっちは道中、焦るじゃないですか。
でも、途中で動いてしまったら、終いの切れ味を生かせない。
だからとにかくデュランダルからは、〝我慢すること〟を教えてもらいました。
『ゴールしたときに、たとえハナ差でも前に出ていればいいんだよ』
みたいなね。
僕にとって、競馬の先生ですよ。
──
後方でドーンと構えてるのかと思ったら(笑)。
池添
いつも内心はめっちゃ焦ってたんですよ!
大丈夫かな~、どうしようかな~、
もうちょっと前にくっついていこうかな~って(笑)。
でもそこで動いてしまったら負け。
いや~、ホントに我慢しましたよ。
度胸が据わってるとか、よく言われますけど、全然そんなことなくて。
──
スイープトウショウも、これまた後方から行く馬で。
池添
スイープで結果を出せたのは、
間違いなく、デュランダルでの経験があったからです。
ただ、みなさんご存じの通り、
スイープに関してはレースより調教が…(笑)。
ホントに動かなくなりますからね。
競馬場でも、よりによって
天皇陛下がいらしていた天皇賞のときに動かなくなって。
係の人が馬をゲートまで引っ張って行ってくれたんですけど、
僕はそれを追いかけて、
あの大観衆の前で馬場を走りましたからね(笑)。 スイープでもいろんな想いをしました。
──
デュランダルがいたからスイープトウショウでも結果を残すことができた。
競馬ってつながっていくものですね。
池添
ホントにそうです。池江(泰寿)先生は、
デュランダルのイメージがあったから、
ドリームジャーニーを
依頼してくださったそうです。
で、ドリームジャーニーからオルフェーヴルにつながって。
──
ドリームジャーニーは、蛯名さん、武豊さんときて、
06年の安田記念から池添さんが騎乗されるようになって。
池添
安田記念は10着だったんですけど、
〝この馬、ずっと乗っていたいな〟って思って、
先生にお願いしに行ったんです。
でも、次はユタカさんで小倉記念を使うことが決まっていて。
僕は夏は北海道なのであきらめたんですけど、
レースの前の週にユタカさんが騎乗停止になってしまったんです。
それで改めて先生に
『まだ(鞍上)決まってないようでしたら、僕に乗せてください』って
お願いしに行きまして。
あの小倉記念で負けていたら、
またユタカさんに戻っていたと思うし、
勝てたからこそ、今があると思ってます。
池添謙一騎手のGI優勝(JRAのみ)
02年 桜花賞 アローキャリー
03年 スプリンターズS デュランダル
マイルCS デュランダル
04年 秋華賞 スイープトウショウ
マイルCS デュランダル
05年 宝塚記念 スイープトウショウ
エリザベス女王杯 スイープトウショウ
07年 阪神JF トールポピー
08年 オークス トールポピー
09年 宝塚記念 ドリームジャーニー
有馬記念 ドリームジャーニー

──
それ以前に、武豊さんが騎乗停止にならず、
予定通り小倉記念に乗っていたら…。
池添
宝塚記念も有馬記念も、僕で獲ることはなかったと思います。
ホント、運命ですよね。
それに、ドリームジャーニーで勝った一昨年の有馬記念は、
僕にとって特別なレースなんです。
究極まで自分を追い込んで獲れたレースだったので…。
──
なにか理由があったのですか?
池添
普段からかわいがっていただいている競艇の松井繁選手が、
有馬記念の週の水曜日に賞金王を獲られたんですよ。
僕はプレゼンターとして呼んでもらったんですが、
そのときに『次はお前やぞ』って言われたんです。
松井さんは、スポーツ新聞のコラムでも
『やるべきことをやっていれば、絶対に(有馬記念を)獲れるんだ』って、
僕のことを書いてくださって。
これは絶対に獲らなきゃアカン!と。
──
外堀から固められたわけですね。
池添
とにかく集中度合いが半端じゃなかったですね。
当日だけではなく、
有馬記念の週はずっと眠れなかったくらい。 きつかったですけど、これから現役を続けていくなかで、
あれ以上のプレッシャーはなかなかないと思うんです。
それで結果を出せたので、当然めっちゃ嬉しかったし、
あのプレッシャーを経験したことで、
これからはもう少し余裕を持って乗れるんじゃないかなって思ってます。
──
さらに〝ここ一番の強さ〟に磨きがかかりそうですね。
そういうイメージがあることに対して、
ご自分ではどう思われますか?
池添
ん~、あまり意識はしてないですけど、
でもやっぱり結果を出せているということは、
そうなのかなぁって思ったり…。
レース前はめっちゃ緊張してるんですけどね。
トイレに何回も行ったりして(笑)。
ただ、馬に乗ったら自然と腹をくくれるし、
レースに行ったら開き直れるところはあります。
あとは、さっきの話じゃないですけど、
自分を追い込んで競馬に乗るのが…好きなのかな。
GIはとくにそうですね。
当日は集中してるから、ほとんど誰とも話しません。
そうすると、ジョッキールームで
四位さんとかに『おお、もう集中してんのか!?』って、
からかわれたりしますけど(笑)。
四位さんにはデビュー当時からお世話になっていて、
2年目に
『気持ちの面で負けないように。
   馬に乗る以上は、自信を持って乗れ』
って言っていただいて。
その言葉は僕にとってすごく大きくて、今でもその言葉を頼りに乗ってます。

──
自信を持って乗ることがいかに大切かは、
池添さんを見ているとわかるような気がします。
ところで、普段はどんなことを心がけて馬と付き合ってますか?
池添
競馬に関しては、自分じゃなくて馬の呼吸に合わせた騎乗を心がけてます。
あとは、意識して馬に話しかけるようにしてますね。
僕、ゲートのなかで、よく馬としゃべってますよ。
もしマイクが付いていたら、僕の声ばっかり聞こえそう(笑)。
──
『今日も頑張ろうね~』とか?
池添
いえ(笑)。
まず、ゲートに入ったら『よく入ったね~』って言いながら、
首差しをポンポンってやります。
隣がまだ入ってなかったら、
『もうすぐお友達がくるからね~』とか、
『もうちょっと待っててね~』とか(笑)。
馬に話しかけてるジョッキーはほかにもいますけど、
僕が一番しゃべってる自信がありますよ(笑)。
──
馬とのコミュニケーションは万全ですね(笑)。
ちなみに、ブログとかツイッターとか、
ファンと直接コミュニケーションを取ることについては、興味ありますか?
池添
なくはないですけど…
僕、心が弱いんで(笑)。
ブログやツイッターとはまた違いますけど、
ネットの世界ではいろんなことを書かれますよね。
こういう職業だから、ある程度は仕方ないのかもしれませんが、
内容によってはホントに落ち込んで、
ジョッキー辞めようかな…とか思ってしまうこともあるくらいですから。
ガッツポーズについても
『かっこ悪い』とか『派手すぎる』とかめっちゃ書かれてるのを見たので、
一時期しないようにしてたんですよ。
そしたら今度は、
『アイツ、なんでガッツポーズしないんだよ!』
って書かれていて。
どっちやねんっ!って(笑)。
──
池添さんのガッツポーズが見られないのは、確かに寂しい…。
池添
あれね、ちゃんと考えてやってるんですよ。
ゴールして2、3秒後に(テレビのカメラが)勝ち馬のアップに切り替わるから、
そのタイミングを狙ってやるんです(笑)。
テレビカメラの位置も全部確認済みです(笑)。
ジョッキーのみなさん、
ガッツポーズはくれぐれも、
ゴールしてから2、3秒後ですよ!
──
どうりで(笑)。
今年もガッツポーズをする瞬間がたくさんあるといいですね。
池添
そうですね。
父親の馬でGIを勝ちたいのもそうですし、
鶴留先生にとっても最後の1年なので…。
なんとかGIをプレゼントできればと思ってます。
──
では最後に、今後の目標を教えてください。
池添
大舞台に強いって思っていただいてるのは強みだと思うので、
それを無駄にしないように、大きい舞台で目立てるジョッキーになりたいです。
あと、
ここにきて意識が強くなってきたのが
ダービーですね。
それまでは2ケタ着順ばかりだったんですけど、
去年初めて競馬に参加させてもらえて(4着ゲシュタルト)。
一瞬〝勝てる!〟って思いましたからね。
それから、だいぶ先になるとは思いますけど、
リーディングも意識していきたいなと思います。
ジョッキーである以上、いつかはやはり獲りたい。
常に前の年より1つ上を目指す感覚で、
ステップアップしていければと思ってます。

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