松田大作インタビュー『一流になるために~イタリア武者修行のすべて~』

(取材日=2011年4月20日)

騎乗馬を求めて、ミラノからピサへと拠点を移した松田騎手。
そこでも『全然相手にしてもらえなかった』という最初の2~3カ月、
支えとなったのは〝一流になりたい〟という自身の強い思いだけだったという。
そんななか、結果的に彼のイタリア修行に大きな意味を与える、ひとりの調教師との再会があった。

──
騎乗馬も集まらない、気持ちも伝えられないという状況のなかで、
毎日どんなことを考えて過ごしていたんですか?
松田
〝一流になりたい〟って日本を飛び出したはいいけど、
俺、このままどうなるのかなって。
正直、焦りましたね。
やっぱり乗るしかない、じゃあ、どうしたら乗せてもらえるんだ…って、
そればかりずっと考えてました。
──
そんなつらい日々のなかで、お正月も帰国されなかったとか。
松田
はい。帰国したのは、JRAの騎手免許の更新のときだけです。
正月はミルコが帰国していたので、ミルコのローマの家で過ごしました。
年が明ける瞬間は、日本でもイベントとして花火が上がったりしますけど、
それが向こうでは、あちこちの個人の家から
ドッカンドッカン花火が上がるんですよ。
ミルコの家はローマの街が見渡せる丘の上にあるので、
それらが全部見渡せて。
そのシーンは圧巻でしたね。
忘れられないお正月になりました。
──
ミルコからなにかアドバイスはありましたか?
松田
いえ、とくになかったです。
そもそも僕はハートが弱くて、
それを乗り越えるためにイタリア行きを決めたんですが、
そういう部分をミルコもわかっていたと思うんです。
だから、
あえてなにも言わないことが、
ミルコなりの励ましだったんじゃないかと
思います。
──
そうかもしれませんね。
ミルコの他には、周りで力になってくれる方は誰もいなかったんですか?
松田
いえ、一度日本に来たことがあるフェデリコ・フロミージャという調教師が、
僕のことを覚えていてくださったんです。
BATTEN BOOMという馬を1頭だけ所有している方で、本業は警察官(笑)。
彼がずっと、僕をBATTEN BOOMに乗せてくださって。
──
BATTEN BOOMといえば、イタリアで初勝利を挙げられた馬ですよね。
初勝利の瞬間はいかがでしたか?
松田
はい…
涙が出るほどうれしかったです。
4度目の騎乗だったんですが、
正直、僕も調教師も自信があったわけではなかったんです。
でも、返し馬の感触がいつもと違っていたので、
あ、もしかしたらいけるんじゃないかと。
だから、思い切って攻める競馬をしてみた結果でした。
──
やはり、それ以前に3度騎乗されていたからこその勝利ですね。
松田
そうですね。それはかなり大きいと思います。
ずっと乗せ続けてくださったフェデリコ師に、
感謝の気持ちでいっぱいでした。
──
初勝利を挙げられたのが1月後半。
2月の中旬からは騎乗数がグッと増えたように思いますが。
松田
初勝利を挙げたあと、僕、厩舎を移ったんです。
余った時間を使ってほかの厩舎の手伝いをしていたら、
『なんで俺の厩舎の仕事をしないんだ』と怒られてしまって。
──
ほかの厩舎を手伝ってはいけないルールがあるのですか?
松田
いえ、とくにルールはないんです。
僕はただひたすらチャンスがほしかったし、
とにかく競馬に乗りたかった。
だから、どうすれば乗せてもらえるのか、考えた末の行動だったんですけど、
調教師に『出ていけ!』と
言われてしまいまして(笑)。
すぐにほかの厩舎を探しました。
次にお世話になったデヴィッド・グリーリという調教師は、
28歳と若く、チャレンジ精神がすごく旺盛なんですよ。
毎日、調教に乗るなかで、僕のことを見ていてくださったようで、
すぐに2勝目を挙げることができたんです。
──
2勝目といえば、その直前に後藤騎手が、
応援フラッグを持ってイタリアまで会いに行かれましたよね。
松田
そうなんです!
まさか、わざわざ日本から来てくださるなんて…。
──
たくさんの応援メッセージが書き込まれたフラッグを見たときは、
どんな思いでしたか?
松田
いや、もうほんとに…。
こんなに応援してくれる人がいるんだなって、胸がいっぱいになりました。
それをわざわざ自分の足で届けてくださった後藤先輩にも、ホントに感謝です。
普通、イタリアまで会いに来てくれませんよね。
後藤先輩も半年間、アメリカで修行されたとき、つらい思いをされたそうで、
『いつか後輩が同じように海外に行くことになったら、
  そのときは力になりたいと思ってた』って言ってくださって。
それを聞いたとき、ホントにうれしくて、
もっともっと頑張らないといけないなと思いました。
それに、
僕もいつか後藤先輩のように、
海外に行った後輩の力になれるような
ジョッキーになりたいなって。
『大作さんが応援に来てくれた、頑張らないと!』って思ってもらえるような、
そんな存在になりたいと、すごく思いましたね。
──
後藤さんが帰国されたその日に、2勝目を挙げられたんですよね。
偶然とは思えないタイミングです。
松田
ホントにパワーをいただいたので。
それに、ちょうど僕に対する周りの目が、
変わり始めたかなっていう時期でもあったんです。
気持ちよく仕事ができるようになって、2勝目を挙げたことで、
さらに周りの見る目が変わってきて。
──
騎乗数も増えて、3月の始めには再びBATTEN BOOMで勝利を挙げられて。
松田
はい。そのレースはすごく自信があったんです。
日本でいう準メインくらいの結構大きいレースで、
馬にとっては初めての3000mだったんですけど、
僕の感触では距離は持つだろうと。
3000mともなると、向こうは極端なスローペースになるので、
それを踏まえて作戦を立てました。
僕の馬は切れる脚がないぶん、バテない強みがあったので、
前に行って追いつかれる前に、後ろの馬たちに脚を使わせてやろう…
という競馬を思い描いていたのですが、
ホントにその通りの競馬ができて。
結局7馬身くらいぶっちぎって勝つことができたんですよ。
力を発揮させることができたことで、
すごく自信につながった1勝でしたね。
──
ずっと騎乗されていた馬だけあって、重みのある〝1勝〟ですね。
松田
そうですね。
4つ勝たせていただいたなかで、一番うれしかったのが最初の1勝、
一番自信につながったのが、この3勝目です。

(第3回へ続く)


■イタリアでの騎乗成績

レース日 競馬場 レースNo. 距離 騎乗馬 着順
2010年
11月8日 PISA・San Rossore競馬場 第4R 芝1900m WIAPPA 5着
11月10日 MILANO・Sansiro競馬場 第8R 芝1000m COMMON MARKET 6着
11月15日 PISA・San Rossore競馬場 WIAPPA 3着
BATTEN BOOM 14着
11月25日 LIVORNO競馬場 第7R 芝1950m BATTEN BOOM 8着
12月6日 PISA・San Rossore競馬場 第2R 芝2000m BATTEN BOOM 4着
12月12日 PISA・San Rossore競馬場 第1R 芝1750m WIAPPA 11着
第3R 芝1500m I'M A CRACKER 5着
12月27日 PISA・San Rossore競馬場 第2R 芝2200m EFISIO DREAM 4着
第7R 芝1200m COMMON MARKET 5着
2011年
1月1日 PISA・San Rossore競馬場 第2R 芝1600m ROVERELLA 14着
第3R 芝1750m MONDANESPOLE 10着
第7R 芝1500m ROSA INNVICTA 8着
1月27日 PISA・San Rossore競馬場 第1R 芝2200m BATTEN BOOM 1着
2月17日 PISA・San Rossore競馬場 第2R 芝1500m SPECIAL SUNSHINE 7着
第8R 芝1800m ISLAND HILL 1着
2月20日 PISA・San Rossore競馬場 第3R 芝1200m FOTOVOLTAICA 10着
第6R 芝2000m BATTEN BOOM 3着
2月24日 PISA・San Rossore競馬場 第5R 芝1200m GUEST MA 3着
第6R 芝1500m MAC OLIVIA 7着
第7R 芝1200m DAEL 4着
2月26日 Capannelle競馬場 第3R 芝1600m SACIDEVI 4着
第5R 芝1700m BAINCOS 11着
2月27日 PISA・San Rossore競馬場 第8R 芝1750m ISLAND HILL 3着
3月5日 PISA・San Rossore競馬場 第6R 芝3000m BATTEN BOOM 1着
3月7日 PISA・San Rossore競馬場 第8R 芝1200m GUEST MA 4着
3月10日 GROSSETO競馬場 第6R 芝2200m SARA'S DREAM 1着
3月12日 PISA・San Rossore競馬場 第6R 芝1900m MAC OLIVIA 6着
3月14日 PISA・San Rossore競馬場 第7R 芝1900m SCOMMESSA 9着
3月17日 GROSSETO競馬場 第1R 芝1750m MIZATIN 8着
3月20日 PISA・San Rossore競馬場 第8R 芝2000m ISLAND HILL 2着降着
3月21日 PISA・San Rossore競馬場 第3R 芝1300m SALAR FIRCROFT 3着
第6R 芝1500m TILLOTAMA 10着
3月22日 MILANO・Sansiro競馬場 第3R 芝1500m VISO PALLIDO 9着

※空欄は、こちらで確認が取れなかった項目です。

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