(取材日=2011年5月19日)

 
福永
岩田くんとの対談は、ちょうど3年ぶりですね。
前回も〝ダービー〟がテーマだったらしいんですが、
編集の方によると、
僕たちはふたりとも
『ダービーより有馬記念を勝ちたい!』
って言ってたそうです(笑)。
岩田
そうやったっけ?
福永
でもまだ、ふたりともダービーも有馬記念も勝ってない…(笑)。
僕は、ダービーで人気馬に乗ること自体、
キングヘイロー以来、ないからなぁ。
岩田
セイウンワンダーは人気やったやん。
福永
離れた3番人気でしたからね。
そのとき岩田くんはアンライバルドで。
岩田くん、ダービーで1番人気に何回乗りました?
岩田
一応、2年連続、1番人気に乗せていただいてます…。
 
 
福永
(フサイチ)ジャンクは?
岩田
あの馬は2番人気やったわ。
福永
僕からすれば、
ダービーで3番人気以内の馬に何度も乗れること自体、
すごいことだと思います。
岩田
毎年必ず、ダービーで乗る馬がいる祐一くんもすごいと思うよ。
キングヘイローから、ほとんど毎年乗ってるでしょ?
(※99年と02年以外、すべて騎乗)
福永
僕はダービーに限らず、レースは乗ってこそだと思ってますから。
だから、人気のない馬でも参戦したいし、
乗っていれば、当然チャンスはあるわけですし。
どのレースでもそういうスタンスです。
岩田くんはこれまでダービーに5回乗って、
1番人気が2回で、2番人気が1回。
これはホントにすごいことですよ。
岩田
そうやね…。
福永
でも、ジャンクのころは、
ダービーに対しての感覚が今とは違ったんじゃないですか?
 
岩田
うん、今、思い返してみれば全然違ったね。
ジャンクのときは、距離が延びていいと思ってたから、
皐月賞が終わった時点で
〝(ダービーを)勝てるかも〟って思ってた。
でも当日、晴れてたけど馬場が緩くて、返し馬の時点で
〝ちょっと難しいかな…〟って感じたんだよね。
アドマイヤオーラのときは、
安藤さんの馬(1番人気フサイチホウオー)しか見えてなかった。
そしたら内のほうから、
ウオッカがって伸びていったわ(笑)。
ダービーの難しさというか、
ひとつ勝つことの難しさを実感したのは、
アンライバルドのときやね。
土曜の夜、東京に着いた時点で
ザーザー雨が降っていて、しかも18番枠…。
それで、去年はいけるんちゃうかと思ったけどなぁ。
ポジションを取りに行ったのが裏目に出たというか…。
 
 
福永
僕もキングヘイローのときなんて、
何もわかってませんでしたから。
そのあと、アサクサキングスで2着にきて、
年齢的にもそろそろかなぁと思って
セイウンワンダーで一発狙ったりもしたけど、
そのとき勝ったのがノリさん(横山典弘騎手)で、
『こんなに早く
  ダービーを勝てるとは思ってなかった』
ってコメントをされてて。
それを聞いて、自分は調子に乗ってたなって思ったんです。
岩田
ダービーに限ったことではないけど、
馬の状態はもちろん、馬場状態とか展開とか、
すべてがマッチしないと勝たれへん。
ホンマにダービーっていうレースは、
乗れば乗るほどその存在が遠くなる。
3年前にはなかった感覚やわ。
福永
そうかもしれませんね。
ダービーを勝ってる、勝ってないが、
ひとつの判断基準になるくらい、
騎手にとってはステータスですからね。
岩田
うん。
唯一〝ダービージョッキー〟って称号が付くくらいやし。
 
 
福永
ダービージョッキーだけの会話には、
入っていけないところがありませんか?
たとえば、石橋(守騎手)さん、ユタカ(武豊騎手)さん、
ノリさん、四位さんたちがダービーの話をしていたら、
僕はそこで何も言うことができない。
聞いていることしかできません。
何て言ったらいいのかな…、うまく言えないけど、
その人たちだけが持っている特別な空気感がある。
岩田
そやな。それはあるかも。
勝った人にしかない〝何か〟がね。
福永
あとよく聞くのは、
〝一度勝ったら、もう一度勝ちたくなる〟っていうこと。
逆に、
安藤(勝己騎手)さんのように

っていう方もいますけど(笑)。
まぁそれは、安藤さんならではですけどね。

 
福永
岩田くんは、人一倍、緊張するタイプですよね。
 
岩田
はい、めっちゃ緊張します…(笑)。
祐一クンはしないの?
福永
僕はキングヘイローのときに、
緊張しすぎて失敗しましたからね。
あのときに極度の緊張を経験したので、
もうそれ以降はないですね。
ほどよい緊張はもちろんありますよ。
でも、眠れないとか、そのことしか考えられないとか、
そういう緊張はダービーに限らず、ないですね。
岩田
じゃあ、キングヘイローのときは、
そういう状態になったってことや。
 
 
福永
そうです。あれはもう究極でした。
皐月賞が全然緊張しなかったから、
ダービーの週になってもとしてたんですよ。
でも、取材を受けているうちに、
どんどんどんどん緊張が高まっていって。
自分が話す言葉がプレッシャーになってくるんです。
ダービーっていうレースがどうこうよりも、
プレッシャーにどう対応すればいいのかっていうことを
教えてもらった気がしますね。
3年目でああいう経験をさせてもらえてよかった。
キングヘイロー以上の緊張は
あれ以来ないし、
おそらくこれからもないと思います。
岩田
〝緊張〟ってコントロールできるものなの?
教えてほしいんやけど(笑)。
福永
ん~、結局のところ、性格なんじゃないですかね。
でも岩田くんは、確かにレース前は緊張してるけど、
実際に馬に乗ったときに、
その緊張が馬に影響してしまうことはないじゃないですか。
だから、僕がキングヘイローで経験した緊張とは
ちょっと違うのかな…と。
岩田
俺だって極度の緊張は経験あるよ。
たとえば先週(ヴィクトリアマイル)のブエナビスタとかさ。
 
 
福永
え!? そうだったんですか?
仮に、僕が先週ブエナビスタに乗っていたとしても、
それほど緊張しなかったかもしれませんね。
なぜなら、あの馬は
それまでに負けているレースもありますから。
ディープインパクトのような全戦無敗の馬に
ピンチヒッターで乗ることになったら、
それはすごく緊張すると思いますけど。
やっぱり性格なんじゃないですかね。
眠れなくなったりするんですか?
岩田
それはない(笑)。
福永
ほら~、やっぱり〝緊張するわ~!〟って
口で言ってるほどじゃないんですよ!
岩田
そんなことないよ!
でも〝どうしよ、どうしよ…〟
っていろいろ考えながら、
次の瞬間、て寝てるわ(笑)。
でも、もうすぐダービーか。
1年は早いな~。
そういえば、昼休みのアレ、やめてほしいんやけど…。
 
 
福永
ジョッキー紹介のイベントですか?
岩田
そう…。
福永
なんでですか!?
あれこそ、選ばれた人間だけの時間ですよ。
僕はあの時間が好きですけどね。
岩田
わかってるんやけど…、
いらん緊張をしてしまうねん!
福永
そっかぁ。
ま、あのイベントの発案者、僕なんですけど(笑)。
岩田
そうなんや!
あのスタンドの観衆を見ると…アカンねん。
福永
確かにあのイベントが始まった以降のダービーで、
岩田くんはほとんど人気を背負ってますからね。
でも僕からしたら、ダービーで人気馬に乗る緊張感を
何度も味わえるなんて、うらやましいですよ。
今年も岩田くんは人気ですね。
岩田
そやね。
東京の皐月賞で2着やったから、
当然チャンスはあると思ってるよ。
 
 
福永
僕は気楽な立場ですからね。
一発狙っていきますよ。
勝たせてもらってる馬ですし(11月20日・京都芝2000mの未勝利戦)、
ネオユニヴァースの仔だから楽しみはあります。
乗りやすい馬ですし。
岩田
ユニバーサルバンクは、ホントにおとなしい馬やね。
レースでも、なにもする必要がないっていうか。
福永
岩田くんに権利を獲ってもらいまして(笑)。
岩田
どうせなら勝って権利獲れよって感じやけどね。
福永
サダムパテックはどうですか?
岩田
これだけの馬に乗せてもらえるのは、ホントにありがたいこと。
型にはめずに、サダムパテックの競馬をしようと思ってる。
馬はすごく落ち着いてるし、
あとはゲートだけ普通に出てくれれば。
〝やっぱり強かった〟っていうレースを見せたいね。
福永
弥生賞で初めて乗ったんですよね?
岩田
そう。俺が思っていた以上に強かったわ。
でもオルフェーヴルも強いね。
皐月賞よりも、さらに良くなってきそうな気がするし。
 
 
福永
調教もすごく動いてましたよね。
混戦って言われてましたけど、
皐月賞が思った以上の勝ちっぷりでしたし。
岩田

やったもんね。
福永
ほかに気になる馬はいますか?
岩田
馬より、逃げ馬不在っていうのが気になる…。
福永
へぇ~。じゃあ、僕がハナに行こうかな(笑)。

(第2回へ続く)


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