(取材日=2011年10月6日)

シンガポールからの刺客・ロケットマンが、
圧倒的な支持を集めたスプリンターズS。
そんななか、『なんでこんなに人気がないのかな…』と、
密かに自信を深めていたのが池添謙一である。
パートナーは、カレンチャン。
阪神牝馬Sを皮切りに、自身の手で重賞を3連勝。
が、人気は同厩舎のダッシャーゴーゴーに次ぐ3番人気にとどまった。
しかし、レースはその自信のままに、
直線で力強く抜け出して着差以上の完勝。
この"特別な秋"に、自らの手で弾みをつけたのである。

ずっとお兄ちゃん(スプリングソング・今年5月に変位疝により死亡)にも
乗せてもらってましたからね…。
天国で応援してくれてたのかな、なんて思って。
でもホント、良かったです。
今年の春に初めて重賞を獲ってから、
負けなしで頂点に上り詰めるなんて、
大した女の子だなって思いますよ。

体質が弱かったというカレンチャン。
3歳時は思うように調整ができず、7カ月という長い休養も経験した。

厩舎の方たちの力が大きかったと思います。
先生もオーナーもきちんと納得されて、長い間休ませましたからね。
成長を促すという意味で、競馬もゆっくり
使ったからこそ、今があると思ってます。
厩務員さんもすごく一生懸命ケアされて、
助手さんも、ほとんどつきっきりでやってましたから。
今もまだ弱いところが残ってますが、
そのぶん、来年はもっと良くなると思いますよ。

数々の大舞台を制してきた彼だからこそ、
1頭の馬にかかわる人々の想いの大きさを知っている。
自分よりまずはスタッフの功績。池添の話は、いつもそこから始まる。
秋華賞でのパートナー、ホエールキャプチャについても、

担当の蛯名さん(厩務員)が21日に定年を迎えるんです。
だから、
秋華賞が最後のレース。なんとかしたい。

と、言葉に力を込める。
人と人とのつながりが希薄になりつつある競馬界において、
こういった感情は、何にも代えがたい武器ではないだろうか。
秋初戦、ローズSも、完璧な競馬だった。
好スタートから、いつにない積極策。
はたして、そこには秋華賞への算段があったのか。

位置取りはとくに意識してはいなかったです。
ゲートを出てくれて、ペースも緩かったので、自然とあの位置に。
だから秋華賞を見据えて、という競馬ではないです。
コーナーが4つある京都2000mと、2つしかない阪神1800mは、
直結しませんからね。ホントに全然違います。
ただ、メンバーも本番と同じような顔ぶれでしたから、
そこで結果を出せたのは大きいと思います。
僕は中間、乗っていませんが、
厩舎の方がしっかり仕上げてくださってましたからね。
着差以上に強い競馬でした。

外を追い込んだ2着マイネイサベルとは、わずかにクビ差。
余談だが、ゴールの瞬間、
勝利を確信した騎手が、池添のほかにもうひとりいた。
『池添クンに、"どうしたんですか!"って言われちゃったよ(笑)』
と笑うのは…。

僕が『よっしゃー!』って言ったら、
小牧さんも『よっしゃー!』ってガッツポーズしていて(笑)。
後ろの人たちは『あれ? どっちが勝ったの?』って
思っていたみたいです。
僕は勝ったことがわかっていたから、
『あれ? 小牧さん!?』って(笑)。

ともあれ、勝利という最高のかたちで、
秋のスタートを切った池添&ホエールキャプチャ。
目指すはGIの頂のみである。
もとより競馬が上手な馬ではあるが、
ひと夏を越して、パートナーに変化はあったのだろうか。

いい意味で、変わったところはないですよ。
今日も乗りましたけど、相変わらずヤンチャで、
落とされそうになりましたし(笑)。
とにかく元気なのが何よりです。
春もそうでしたが、スタートする前まではヤンチャなんです。
ただ、ゲートが開いてしまえば、折り合いはすぐにつくし、
とにかく乗りやすい。競馬が本当に上手ですね。

次なる舞台は、数あるGIのなかでも、もっとも紛れの多い京都の2000m。
少々力の足りない馬でも展開ひとつでチャンスが生まれる反面、
人気馬が力を発揮できないまま、ゴールを迎えてしまうこともある。
はたして、池添が思う勝負のカギは──

やっぱりスタートですね。コーナーが4つありますからね。
ローズSのときは出てくれましたけど、
今度も出てくれるかといったらわからない。
オークスのときも、ゲートのなかではおとなしかったのに、
ああいうかたち(伸び上がるようにゲートを出て、位置取りが後方に)
になってしまいましたから。
次も大丈夫とは言い切れない。
だから、外枠は引きたくないですねぇ…。
京都の2週目となれば、まだ馬場もいいでしょうし、
なるべく前…中団より前目の位置で、っていうのが理想かな。

立ち遅れたオークスでも、クビ、ハナ差の3着。
前走も見た目以上に余裕の勝利だった。
力があるのはわかっている。
鞍上の腹も、当然決まっている。
大舞台に強い男・池添謙一。
まずは秋華賞、その意気込みを聞いた。

ライバルをあえて挙げるとすれば、やっぱりマルセリーナ。
福永先輩もいろいろ考えて乗ってくるでしょうし…。
ただ、結果的にGIを勝っていないだけで、僕の馬も力がありますから。
ええ、 GIを獲れる馬だと思ってます。
3歳馬同志では最後のGIですから、ここは"何としてでも"の気持ちです。

スプリンターズSのあと、高らかに飛び出したGI3連勝宣言。
『一発目を獲れたから、調子に乗って言っちゃいました。
  やっちゃいました…言うんじゃなかった(笑)』
と笑うが、
この男なら…誰もが思うところだろう。
今週、来週と緊迫の秋は続く。
来週は、史上7頭目の3冠馬を目指すオルフェーヴルについて、
池添の想いをたっぷりとお届けしよう。

(第2回へ続く)

前代未聞の秋へ──池添謙一騎手独占インタビュー

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