岩田康誠と福永祐一。

皆さんは2人に対してどのようなイメージを持っているのだろうか……。
2人はかなり対照的な立ち位置、
つまり、それぞれに全く違うイメージを抱いている人が多いのではないだろうか……。

それは出自の違いであったり、
カメラや字面を通して窺える性格の違いなどから
感じられる誤差なのではないだろうか。

これが一般的なイメージかどうかは分からないが、例えるなら
「問題を沢山抱えているからこれ以上増やしたくない」と考えるのが福永であり、
「問題を沢山抱えているから一つくらい増えても関係ない」と思うのが岩田。
そんなイメージを持っている人が多いのではないだろうか?
では、実際のところはどうか……。
あくまでも管見であり、必ずしも正しいと言い切る気は毛頭ないが、
それぞれと付き合ってきた私の個人的なイメージを記させていただこう。

福永のドラマは唐突に始まった。
コンダクターのタクトが振り始めた途端、サビの部分が流れるように、
騎手デビュー初戦、2戦目をいきなり連勝。
決して格好の好い騎乗ではなく、
馬の能力が鞍上の未熟さを凌駕してお釣りがあったという競馬だったが、
世間は"やはり蛙の子は蛙だ"と天才二世の出現に色めきだった。

これに対し岩田のデビュー当初を知る人はどのくらいいるだろうか。
岩田が初めてJRAのGIを制したのは2004年の菊花賞。
デルタブルースによる勝利は彼の名を
一気に全国の競馬ファンへ届けることになった。

しかし、この時、彼はすでにデビュー14年目。
積み上げた勝利数は三千近くまで達していた。
もちろん「勝っても勝っても無視されていた」というわけではない。
公営競馬出身の騎手にとって、それはあまりにも普通の流れなのであった。

これだけ出自の違う2人の歩んできた道が時に交わり、
時に絡み合うようになったのは、
当然、岩田のJRA入りが大いに関わっている。

06年、岩田はJRAに移籍する。
栗東の所属となり、福永と戦場を供することになる。

騎手としての先輩は岩田だが、JRAの先輩は福永。
2人の関係に微妙なバランスが生まれるのは当然。
そこへ持ってきて、手綱をとった時と馬から降りた時に
大きなギャップを感じさせる岩田の性格や言動が、
意外とコンサバティブな福永とは交わらないことも多々あるようだ。

勘違いしないで欲しい。
それは2人の意見が合わないとか仲が悪いということではない。
考え方や出自の相違は、むしろ互いにとって
大きな刺激になっただろうという意味である。

例えば、ジョッキーにとっての騎乗技術が上がるなら、
メフィストフェレスにも迷わず魂を売り飛ばすと思えるのは岩田の方だろう。
岩田は社会的地位やステータスを崇拝したり、
流行を追いかけたりといったいわゆる"スノビズム"とは
かけ離れたところで暮らしているように思える。
だからジョッキーとして上手くなれるのであれば、何でもするように感じられるのだ。

これに対し、福永は昔から馬に乗っていない時にも
スマートさを求めるようなところがあった。
若くて知識のない頃は、そんな想像力はただの妄想となり
兼ねない危険さを孕んでいたが、経験を積んだ今は違う。
どこまでも実務的な発言を聞いていると、
競馬に魂を売り飛ばすことまではしないように思えるのだ。
何度も言うがあくまでも個人的な見解ではあるが……。
これらの差異はどちらが良いとか悪いというものではない。
プロ野球とメジャーリーグに、日本の競馬と欧米の競馬にそれぞれ違いがあるように、
良い悪いではなく、違いがあるということだ。

そんな2人がそれぞれに損をしていると思える部分がある。

福永は研究し勉強し、技術力を上げて今、
リーディングを争う地位まで辿り着いた。
しかし、一般的なイメージとしては、ジョッキーとしての信頼度は
まだ岩田の方に軍配が上がるのではないだろうか。
香港やアメリカでもGIを勝ち、
国内でも十分勝ち鞍を積み上げている福永だが、
"ここ一番の勝負強さ"に対するイメージは岩田に挙手する人が多いようだ。
福永の優し過ぎるイメージがそう思わせるのかは分からないが、
そんなところは彼が損している部分ではないか?と思えてならない。

これに対し、岩田はやってのけた仕事の大きさと
対等の評価を受けていない気がする。
本番で実力を発揮できないという人が時々いるが、
それこそが実力なのであり、
そういう意味では岩田の実力は相当のものなのである。
そして、その実力を裏付けるように彼は常日頃から
競馬においては枝葉末節まで様々なことを考えている。
それだけに騎乗ミスとは思えぬようなことでも、
綿で怪我をする太宰治ばりに落ち込むことがある。
しかし、勝った時にみせる底抜けに明るい態度と
興奮した時に口から飛び出す予想外の発言が、
そういった裏に隠されたエピソードを
全てふっ飛ばしてしまっている気がするのだ。

まぁ、どの世界にも全てが完璧な人などいないわけで、
2人がそれぞれに損をしていると思えるところも
また人間的な魅力を浮き立たせる部分なのかもしれないのだが……。

「岩田君とは良い関係です。すごく刺激になっています」
そう語ったのは福永だ。
12月16日現在で2人の勝利数は岩田が130勝、福永が124勝。
ここまできたら最後まで割って入る人のいないように、共に磨き合いながらリーディングを争っていただきたい。

(文中敬称略)


後半の次回はそれぞれの有馬記念を前にした心境を語っていただきます。

平松さとしがみた岩田康誠vs福永祐一『Coming the next generation』

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