(取材日=2012年3月14日)

──
2007年に宮厩舎からデビューされたわけですが、
お父様の厩舎に所属するという選択肢はなかったのですか?
康太
僕には選択権がなかったので。
ただ、
親父の厩舎じゃなくて良かったです。
怖いから(笑)。
子供のころから、親父は怖かったです。絶対にはむかえなかった。
悪さをしようと企んでも、ふっと親父の顔が浮かんで、
怒られてまで(その悪さを)したいか…って冷静に考えて、
そうでもないなと思ったり(笑)。
普段は優しいんですけどね。怒るとホントに怖い。
──
佑介さんいわく、
康太さんがデビューされてから、ずいぶん楽になったそうですよ。
それまでは毎週のように、競馬のことでお父様に怒られていたと。
康太
標的が僕に変わったんですね(笑)。
僕もデビュー当時と比べると、全然怒られなくなりましたよ。
──
デビューした当時、佑介さんはすでにリーディング上位で活躍されてましたよね。
お兄さんの存在が、プレッシャーになったりはしませんでしたか?
康太
プレッシャーに感じることはなかったです。
それに、僕が中学校に上がるころには、兄貴はすでに競馬学校に入っていて、
兄貴の卒業と入れ替わるように僕が競馬学校に入ったので、
6年間、ほとんど会ってなかったんですよ。
だから、僕がデビューしたころ、兄貴はすでに社会人3年目で、
「すげー大人になってる!」って思いましたね。
だから、デビューしたころは、もう
"お兄ちゃん"っていう感じではなく、
"先輩"という感覚でした。
──
なるほど。たしかにその時期の6年間は大きいかもしれませんね。
康太さんも、初年度から同期でトップの成績を残されましたよね。
ジョッキーという仕事に手応えを感じたのでは?
康太
いや、もっとやれるんじゃないかと思っていたので、
"俺、全然ダメだな…"って思いました。
同期でトップといっても、環境的に恵まれてましたからね。
新人賞ももう少しで獲れたのに、最後に騎乗停止になってしまって…。
それはすごく悔いが残ってます。
今の自分だったら、(騎乗停止を)避けられたのにって思って。
──
でも、2年目にはジョーカプチーノと出会って。
NHKマイルCは、本当に鮮やかな勝利でしたね。
康太
気持ちよかったですね~。
あの馬との出会いは本当に大きかったです。
やっぱり、一番思い入れが強いです。
──
ゴールした瞬間のことは覚えてますか?
康太
はっきりと覚えてます。
ガッツポーズを決めようと思ったら、全然タイミングが合っていなくて、
まったくテレビに映ってなかったっていう…(笑)。
あれってタイミングが大事で、
ゴールしてから3秒後にするのがベストらしいんですけど。
池添さんに聞いておけばよかった(笑)。
小さくガッツポーズしたんですけど、
カッコ悪いし、映ってないしで、残念でした(笑)。
ただ、まさか勝てるとは思っていなかったので。
──
きっと次は決まりますよ(笑)。
そのジョーカプチーノでは、GI(高松宮記念)の1番人気も経験されて。
貴重な経験だったのではないですか?
康太
そうですね。
でも、あの高松宮記念は、すごく悔しかった。 ジョッキーになってから、一番悔しかったレースですね。
思っていた騎乗ができなくて、自分に腹が立ちました。
しかもあの日の夜、
勝ったリスポリ(キンシャサノキセキ)とご飯に行ったんですよ。
もともと約束してたんですけど、やっぱりレースの話になって、
リスポリはすごくはしゃいでいて。余計に悔しかったです(笑)。
そのあたり、彼は空気を読まないので、
逆に俺に対して『どうした? 元気ないな』みたいな(笑)。
──
それはキツイ状況でしたね(笑)。
でも、康太さんは、ここ一番に強いイメージがあって、
実はデータ上でも、メインレースの勝ち星が一番多くて、
勝率、連対率も一番高いんですよ。
康太
へぇ~、それは知りませんでした。
ただ、たしかにあまりプレッシャーを感じるほうではないかも。
周りからも『飄々としてる』って言われますし。
でも、変なところで緊張しいだったりするかも。
──
ちなみに、これまで一番緊張したレースは?
康太
ジョーカプチーノで出走したダービーです。
あの日は自分でもヤバかった(笑)。
レースの前の日、興奮しちゃって、初めて眠れなかったんですよ。
やっぱりダービーで騎乗することは子供のころからの夢だったので、
興奮して寝付けなくて。
緊張というより、テンションが上がりすぎちゃった感じかな(笑)。
──
2年目でダービーに騎乗するなんて、なかなかないことですものね。
康太
そうですよね。
ジョーカプチーノには、本当にいろんな経験をさせてもらって。
──
ありがたくない経験ですが、
去年、一昨年は、
肺気胸(肺に穴が開いて、外に空気が漏れ出す病気)に悩まされましたね。
康太
予防しようがなくて、突然くるんですよ。
とにかく痛くて、息苦しくて。
痩せていてヒョロッとしている人がなりやすいらしいんですけど、
原因不明の病気なので、
(穴が)開いちゃうんじゃないか、開いちゃうんじゃないかって
考えること自体が良くないと。
でも、3回も手術をしましたから、
ジョッキーを続けていけるのかなって思ったこともあります。
予防もできないし、手術をしても意味がないんじゃないかとか。
ただ、ある程度年齢が行くと、なりづらくなるそうなので、
今はなるべく考えないようにしてます。
──
病気を経験されたことで、自分自身、変わってきたところはありますか?
康太
乗れない期間がけっこうあったので、
元気に乗れることにありがたみを感じるようになりましたね。
今は、1鞍1鞍、
そのありがたみを噛みしめて乗ってます。
だから、1頭1頭に集中して乗れるようになったかもしれません。
今年は、年明けに騎乗停止になってしまったので、
余計に踏んばらなくちゃっていう気持ちが強いです。
ここまでは、おかげさまでいい流れてきていると思うので、
心機一転、頑張りたいです。
 
(第3回へ続く)

藤岡康太騎手インタビュー『23歳、康太の主張』

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