(取材日=2012年7月26日)

石橋脩というジョッキーは、28歳という年齢にはいささかそぐわない、大人びた雰囲気を持っている。
それが取材者としての素直な第一印象なのだが、彼の関係者いわく『口数が少ないだけですよ(笑)』。
そこで、彼の素顔に迫るべく、最終回では〝ジョッキー・石橋脩〟と同時に、
〝人間・石橋脩〟にも迫ってみようと思う。
まずは、「落ち着いていますよね」と、素直な印象をぶつけてみた。

石橋
そうですねぇ…、まぁ落ち着いているというか、
僕は人見知りするので、知らない人と話すのがちょっと…(笑)。
それに、こういうインタビューでも、
聞かれたことに対してはっきりと答えが出ないタイプなんです。
自分のことをしゃべるのが好きじゃないんですね。
だから、
取材は……正直、苦手です。

そうはいってもGIジョッキーとなり、さらなる活躍が期待される今、
取材依頼はますます増えるはずだが「ん~、いや…、いいです(苦笑)」と、
どこまでも苦手意識全開だ。
そして、その本気度を裏付けるような、こんなエピソードを明かしてくれた。

石橋
この前、新潟のテレビ局から出演のオファーがありまして。
毎年、新潟に参戦しているジョッキーが出る
恒例の番組があるんですよ。
僕、本当に嫌だったから、申し訳ないんですけどお断りしたんです。
そうしたら、北村(宏司)さんに
『お前、ちゃんと受けろよ! なんにも予定ないんだろ!』って、
本気で怒られまして…(苦笑)。
北村さんは、すごく優しくて、普段は絶対に怒らない人なんです。
そんな北村さんを怒らせてしまったわけですけど、
どうしても嫌で…。とくにテレビは苦手ですね。
あ、勝利ジョッキーインタビューは
大丈夫ですよ。
うれしくて興奮してますから(笑)。

彼がジョッキーという職業に出会ったのは、小学生高学年のころだといういう。
きっかけは『ダービースタリオン』。それまで競馬は、まったく身近な存在ではなかったという。

石橋
ダビスタで初めて競馬というものを知りました。
それをきっかけに、実際の競馬も観るようになったんですよね。
で、観ているうちに、ジョッキーになりたいなって思い始めて。

石橋らしいな、と思うのが、夢が芽生えてから進路の決断に至るまで、
両親には一切、相談しなかったという点。
当時から、石橋にとって〝言葉〟は手段ではなく、両親もまた、そんな彼を重々わかっていた。

石橋
競馬学校の願書を取り寄せるまで、両親には
(ジョッキーになりたいということを)ひと言も話していませんでした。
でもね、競馬は観てるし、乗馬をやりたいって言い始めるし、
ご飯は食べないし。
バレバレだったと思いますけど(笑)。
話してからも、とくに反対はされませんでしたね。
まぁ、反対しても無駄だと思ったんだと思います。

テレビに出たり、インタビューに答えたり、そういった場での自己表現は苦手だけれど、
ターフの表現者である自分には、強いこだわりを持つ石橋脩。
騎乗予定馬の過去のレースを1頭1頭見ることも、木馬に乗ることも体を鍛えることも、
すべては自身が思い描く理想に近づくためだ。

石橋
今の自分を客観的に見ると、
だいたいが標準くらいというか、飛び抜けたところがないというか。
ただ、
巧くなりたい、
かっこよく乗りたいっていう気持ちは、
常に強く持ってます。
海外のジョッキーみたいに乗れたら…と思って、
毎日頑張ってるんですけどね。
実際はまだまだがむしゃらになってしまって、
追うときに頭が動いてしまうし…。
直していきたいんですけどね。

「ジョッキーという仕事が本当に好きだから、ほかの人の乗り方を見るのも好きです」という石橋。
先の言葉にもあるように、なかでも海外のジョッキーにインスパイアされる部分が大きいようだ。

石橋
海外のジョッキーと一緒に乗れること、
僕はありがたいと思っています。
海外のレースを観ていて〝なんでこんなにたくさん勝てるんだろう〟
って思っていたスミヨンとかが、
本当に日本に来ちゃうんだ!みたいな(笑)。
どんな乗り方をするのかなぁって、すごく楽しみでしたね。
やっぱり〝騎手〟が好きなんでしょうね。もうファンというか。
実際に会っても、「おはよう」くらいしか言えないんですけど(笑)。
本当は英語も勉強したいと思ってるんですよ。

そして、いつかは海外へ──。
「行ければですけどね」と、言葉は控え目ながらも、その前提として、語学習得への意欲を見せた。
ブレることなく、コツコツと自分の道を切り開いてきた石橋だけに、
それが単なるリップサービスではないことが伝わってくる。

石橋
まずは50勝することが目標ですね。 これまで年間50勝を超えたことがないので。
今年は本場(中央開催)でずっと乗せてもらっていますし、
そのなかで50勝できればいいなと思ってます。

年間50勝、語学習得、海外挑戦。
ステップアップの過程には、いくつもの目標や可能性があるが、
はたして石橋脩の最終的な野望は、あくまでジョッキーとしての理想型にある。

石橋
将来的には、自分の理想とする体の動きが、
馬の上でできるようになりたいです。
その理想に少しでも近づけるように、
海外のジョッキーの乗り方を観たり、
どこで締めてどこでバランスを取るとか、
いろいろ自分なりに考えて改良しているんですけどね。
木馬の上ではできても、実際の馬の上ではなかなか難しいです…。
でも、理想とするものがある以上、
自分で見て「かっこよく乗れてるじゃん」
って思えるレースを、ひとつでも
増やしていきたいと思っています。

今回、おそらく苦手意識と戦いながらも(?)、丁寧にインタビューに応じてくれた石橋脩。
最後に「イケメン、イケメンって言われるのは嫌ですか?」と、不躾な質問をぶつけてみたところ
「別に…嫌じゃないですけど(笑)」と、ニッコリ。
ジョッキーとしても人間としても、今後ますます輝きを増すであろう彼に、
大きな期待を抱かずにはいられない。

石橋脩騎手インタビュー『理想を求めて』

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