(取材日=2012年9月19日)

浜中
岩田さん、聞くところによると、
中央に来たばかりのころはもっと大人しかったとか(笑)。
僕はまだ競馬学校にいたので、全然知らないんですけど。
岩田
猫かぶってたんやね。猫を脱いだら虎がいた(笑)。
とにかく、「すんません、すんません…って謝ってばっかりいたわ。
あと、
「あの~、芝の3000mのレースって、
  どう乗ればいいんですか?」って、
四位さんのバレットに聞いたりして(笑)。
騎手じゃないからわかるわけないのに。
浜中
岩田さん、おもしろすぎます(笑)!
岩田
ある調教師からは
「お前は長い距離のレースなんか乗ったことないんだから、
  なにも知らないでやたらと前に行くな」
とか、言われたりしてね。それが悔しくて。
早く覚えたい、早く結果を出したいって、もうそればっかりやった。
東京も嫌いやったなぁ。どう乗ればいいのか、全然わからなくて。
──
でも当時、岩田さんは、2ケタ人気の馬でもバンバン持ってきてましたよね。
浜中
岩田さんがそんな人気のない馬に乗るなんて、今では考えられませんよね。
岩田
人気があろうとなかろうと、
とにかく当時は“勝たなアカン!”
っていう気持ちがすごく強くて。
新馬でもゴリゴリいってたら、四位さんに
「それじゃダメだよ。新馬にはレースを教えてあげる気持ちで乗らないと」
って言われたな。
浜中
岩田さんにもそんな時代があったんですねぇ。
岩田
角田先生がまだジョッキーで、
「お前はまだ走る馬の背中を知らない」て言われたのも覚えてる。
当時はピンとこなかったけど、
ウオッカ、ブエナビスタ、ジェンティルドンナとか、
いい馬の背中をたくさん知った今、角田先生が言いたかったことがよくわかる。
浜中
ほかにもアドマイヤムーン、アンライバルド、ヴィクトワールピサ…。
岩田さんは、本当にすごい馬の背中をたくさん知ってますよね。
僕もスリーロールスで菊花賞を勝たせてもらいましたけど、
あれからもう3年も経ってしまった…。
岩田
俺だって、2004年にデルタブルースで菊花賞を勝ってから、
丸々3年間、GIは勝てへんかったよ。
(※2勝目は2007年、アドマイヤムーンで制したジャパンC)
いい馬にたくさん乗せていただいたのに、
経験が足りないばっかりに、全部失敗してた。
浜中
そっかぁ。岩田さんにもそういう時期があったんですね。
勝てるようになったのは、なにかきっかけのようなものがあったんですか?
岩田
まぁ、いろいろあるけど…、
結局は日々の積み重ねちゃう?
今となってはそう思うよ。
浜中
今の僕は、岩田さんとリーディング争いをしているといっても、
大きなレースで「アイツに頼みたい」って
思われるような存在じゃないんですよ。
全然足りないんです。
GIシーズンには、
毎週GIに乗れるようなジョッキーになりたいです。
岩田
世間では、まだ浜中俊=若手やからな。
周りは「アイツ、いい馬に乗って、たくさん勝ってるやん」って
思ってるかもしれないけど、いっぱい不安があるんやろな。
(川田)将雅みたいに、海外へ行ってみたいっていう気持ちはないの?
浜中
今はまったくないです。
もう“今”だけで精いっぱい。
本当に必死なんです。
それに、自分に課せる明確なテーマもないですし。
岩田
今は日本にいても、外国人ジョッキーと一緒に乗れるからな。
彼らの騎乗を見ていろいろ学んで、
そんななかで負けたくないっていう気持ちが芽生えて。
そうやって俺たちは、もっともっと伸びなアカンと思うわ。
俺も含めて、日本人ジョッキーのレベルは、まだまだやと思う。
外国人ジョッキーと同じレベルで
戦えるジョッキーが何人か出てこないと、
レースがおもろない。
浜中
そういう岩田さんは海外に行かないんですか?
日本人ジョッキーの力を見せつけてきてくださいよ。
岩田
海外で乗りたいとは思う。もっと若かったら行ってると思うよ。
でも今は家族がいるし、
俺は日本で頑張る。 息子がジョッキーになりたいって言い出して、
トレセンの乗馬苑に通い始めたしな。
浜中
息子さんがジョッキーになったら、ガッツリ教えるんでしょうね。
岩田
もちろん! 1から10まで教えるよ。
今の目標はね、
息子と一緒に競馬に乗ること! で、娘がバレットで…っていうのが夢やね。
浜中
いいですね~。お子さん、今おいくつでしたっけ?
岩田
息子が12歳で、娘が7歳。
最低、あと10年は乗らなアカンな。
──
では最後に、今年も残りわずかですが、この秋の目標をお願いします。
岩田
打倒、浜中俊! 頑張ります!
浜中
じゃあ僕も打倒、岩田康誠で…。 そういえば僕、岩田さんが新潟競馬場で
「打倒・浜中俊」って書いてあるボードを持ってる写真、見ましたよ(笑)。
岩田
それだけ注目してるっていうことや。
頑張ってほしいし、リーディングを獲ってほしいっていう気持ちもある。
でも、まだ負けない自信はあるし、
今年は俺がリーディングを獲らなければいけないと思っている。
今年獲れなかったら、俺はそれだけの器っていうことや。
あとは、天皇賞あたりから外国人ジョッキーが続々来るから、
乗り馬を取られんようなジョッキーにならないと。
──
浜中さんは、逃げ切る自信はありますか?
浜中
まったくありません(笑)! でも、 最後まで喰らいついていきますよ。
そのなかで、欲をいえば、
大きなレースでチャンスをつかみたいと思っています。

岩田康誠×浜中俊『世代を超えた“同志”の競馬談義』

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