(取材日=2012年12月20日)
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ナリタトップロードに初めて跨ったのはいつですか?
- 渡辺
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2歳の秋に入厩してきたんですが、僕は調教担当ではなかったんで、
初めて跨ったのは新馬の最終追い切りでしたね。
いい背中をしているとは感じたんですが、
肉体的にも精神的にもまだ幼いという印象でした。
その新馬戦は、僕が未熟なせいで、チグハグな競馬になってしまって…。
それでも2着にきたので、あらためてすごい能力を持っているなと思いましたね。
その後、クラシックまで急激に良くなっていったのを覚えています。
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ナリタトップロードは、普段どんな性格だったのですか?
- 渡辺
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基本は大人しいんですが、一度カーッとなると、手がつけられない馬でした。
よく助手さんを振り落していましたから。
結局、その性格は最後まで直りませんでしたね。
競馬自体は乗りやすい馬だったんですけど、
そこにいくまでがちょっと(苦笑)。
そうそう、僕が他の馬に乗って攻め馬をしている時に、
カラ馬が走ってきて、すれ違ったんです。
どっかで見たことがあるなと思っていたら、
トップロードでした(笑)。
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ヤンチャな性格だったんですね(笑)。
- 渡辺
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ちょっと怖がりなところがあったので、その影響もあったと思いますね。
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ナリタトップロード以外で、印象に残っている馬はいますか?
- 渡辺
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デビューして初めて勝ったミスターハリケーンですかね。
初勝利が同期で一番遅かったんですよ。
沖先生に勝てそうな馬を用意していただいたんですが、
なかなか結果が出せなくて…。
だから、勝てた時は本当にうれしかったです。
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その師匠である沖調教師は、どんな方ですか?
- 渡辺
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もう見たままの温厚な人ですね。
芯が通った昔ながらの職人気質を持った人でもあります。
普段はあまりしゃべらないんですが、馬のことになると違いました。
僕が「どんな馬ですか?」って聞くと、地べたに四つん這いになって、
「つなぎがこうなっててな」って細かく教えてくださるんです(笑)。
本当に馬に対する愛情は誰よりも持っている方ですね。
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お父さまも沖厩舎で厩務員として働いていらっしゃいますよね。
ということは、子供のころから沖調教師のことを知っていたということですか?
- 渡辺
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そうですね。
沖先生には中学生の時、競馬場に連れて行っていただいたこともあります。
確かオグリキャップとバンブーメモリーのマイルCSでした。
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子供のころに見た沖調教師と騎手になってからの沖調教師とでは、
やはり印象が違いますか?
- 渡辺
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う~ん、子供のころにどう思っていたか覚えてないんですよね。
そうだなぁ、当時は調教師が偉い人だとは知らなかったから、
沖先生のことを“厩舎の人”くらいにしか思っていなかったかもしれないですね。
もしかしたら、タメ口をきいていたかも(苦笑)。
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そう思っていた人が、急に師匠になるわけですよね。
違和感があったんじゃないですか?
- 渡辺
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そうですね。先生もやりづらかったと思いますよ(苦笑)。
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現役時代、沖調教師との一番の思い出はありますか?
- 渡辺
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僕らの世代はみんなそうだったと思うんですが、
ジョッキーになってから2年ほどは
先生の家に居候しなければならなかったんです。
そのころになかなか初勝利を挙げられなくて、
ちょっとヒネくれていた時期があったんですよ。
そうしたら
「いつまでもウジウジしてんじゃない!」って、
先生に飛び蹴りをされまして(笑)。
先生に怒られたのは、後にも先にもあの時だけだったので、
とても印象に残っていますね。
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それは忘れられない出来事ですね(笑)。
渡辺騎手にとって、沖調教師とはどんな存在ですか?
- 渡辺
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もちろん師匠であり、時には父親のような存在でもあり…、
尊敬してやまない人ですね。
先生は今でもプールで馬に乗っていますし、
調教後に自分で運転して競馬場に行っています。
そういったところを僕が助手として、
先生の負担を少しでも減らせたらなと思います。
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お父さまも厩舎で働いているので、近くに父親が2人いるようなものですね。
- 渡辺
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そうですね。
厩舎のスタッフも、昔から知っているオッチャンばかりですから(笑)。
厩舎に行くのは、家に帰るようなものです。
まぁ、親父はやりづらいと思いますけどね。
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お父さまはどんな方ですか?
- 渡辺
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パンチパーマで、ヒゲを生やしてるので、見た目はホンマに怖いですよ(笑)。
実際はやさしいんですけどね。
最近は孫ができたので、もうデレデレです。
毎日、電話がかかってきて、「メシ食べに来い」って誘ってきます。
でも、残念ながら、おじいちゃんには懐いていません(笑)。
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今後は、そのお父さまもいる沖厩舎で調教助手として働きます。
身近な目標、そして調教師になってからの夢があれば教えてください。
- 渡辺
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競馬には乗れなくなりますが、馬に乗ることが本当に好きなので、
与えられた仕事をひとつひとつ噛みしめながら、
きっちりこなしていきたいですね。
そして、その間、しっかり調教師試験の勉強をして、
数年後には合格できるように頑張ります。
調教師になってからの夢は、今の時点で具体的にはないですね。
ただ、土台は沖先生のように、
そして成功されている調教師さんの
いいところを吸収できるような調教師になれたら、と思います。
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(第3回へ続く)